
現代には100種類を超える依存症があるとされていますが、その中でもギャンブル依存症やアルコール依存症に次いで深刻なのが「薬物依存症」です。
一般的に知られる覚醒剤や麻薬、危険ドラッグをはじめ、最近では病院で処方してもらえる睡眠薬や向精神薬、そしてドラッグストアで誰でも買える市販薬の乱用なども含めて大きな社会問題となっています。
薬物依存で逮捕された芸能人たちが言う「薬物依存に完治はない、苦しみは一生続く」という言葉からも分かるように、薬物依存症は一度陥ると一生苦しみが続く恐ろしい病気です。
しかし、なんとこれらの薬物依存症の治療・改善に大麻草由来の成分「CBD」が効果的である可能性が示唆されたのです。
そこで、この記事では薬物依存症に陥るまでのプロセスや、CBDが薬物依存症の治療・改善に期待出来る理由を解説しようと思います。
現在、薬物依存症でお困りの方のお役に立てれば幸いです。
目次
薬物依存症に陥るプロセスとメカニズム
薬物依存症とは?という説明はここでは割愛させて頂きますが、薬物依存症に陥った先には一体どんな未来が待っているのでしょうか。
現代の若者は「ノリで」「友達に勧められて」といった軽い感じで薬物に手を出してしまうようですが、ノリで手を出してしまったのとは引き換えにならないほどの代償を背負うことになります。
ここでは薬物依存症に陥る恐ろしいメカニズムを説明します。
1.「一度だけなら…」ちょっとした油断が招く薬物依存
薬物依存症に陥る人は、「一度だけなら…」と油断してしまったことがきっかけの人がほとんどだそうです。
しかし、そのたった一度の使用で得られる快楽や多幸感は凄まじいもので、たった一度の使用でも一生のうちに経験する何倍もの快楽を得られるとも言われています。
一度でも経験してしまうとその凄まじい快楽を脳が覚えてしまうので、自分の意志ではなかなか止めることが出来ません。
薬物依存によって自分の人生をめちゃくちゃにしてしまった人、そして他人の命を奪うなど取り返しのつかない事をしてしまった人も、全ての始まりは「一度だけなら…」だったのです。
2.今までの量では満足出来なくなる恐ろしい「耐性」
薬物の使用を繰り返しているうちに、体内では薬物に対する「耐性」が出来上がります。
これは身体が薬物に慣れてしまって今までと同じ量では満足出来なくなってしまう現象で、例えば「便秘改善のために便秘薬を毎日飲んでいたら、いつもの量では効かなくなった」などの例が挙げられます。
耐性が出来るといつもの量では快感が得られなくなってしまい、その結果「もっと、もっと」と摂取量を増やすようになり、薬物依存を加速させます。
そうなると、あとはもう想像つきますよね?
摂取量を増やして薬物依存が加速すると、それに合わせてまた耐性ができ、最終的には致死量に近い量を摂取しないと満足出来なくなるのです。
3.使用直後の「偽の快楽」と、数時間後に訪れる「激しい倦怠感」
薬物はたった一度の使用で「一生のうちに経験する何倍もの快楽」を得られると言いましたが、実はここで得る快楽は「偽の快楽」だと言われています。
使用直後の強い多幸感や快感は実は偽物で、その数時間後には「激しい倦怠感」に襲われる仕組みになっています。
そして恐ろしいことに、倦怠感から脱したい気持ちから再び薬物に手を出してしまいます。
こうして快楽と倦怠感を延々と繰り返すことによって、いつの間にか薬物が手放せなくなるのが薬物依存症のメカニズムなのです。
4.気付けばいつの間にか「精神疾患」に
こうして薬物の使用を繰り返すうちに、ほとんどの人が精神疾患を発症します。
要するに、心身共に正常な状態で薬物を使用出来る人はいないということです。
薬物の種類によって症状は異なりますが、主に覚醒剤(アンフェタミン)やコカインによって引き起こされる「精神刺激薬精神病」の場合、幻覚・妄想などの症状があります。
また、覚せい剤やコカイン以外の薬物の場合、統合失調症と同様の症状が現れることが多く、薬物の使用歴が分からない限り精神科医でも区別がつかず、誤診してしまうほどだといいます。
薬物依存によってもたらされる恐ろしい症状
薬物依存症に陥ると、初期から末期にかけて様々な症状が現れます。
初期のうちに対処出来ればまだ良いのですが、末期になると治療・改善はなかなか困難になります。
ここでは、末期に至るまでの過程ごとに症状を見て行きましょう。
初期症状:精神的依存
- 「もう一度使いたい」と思うようになる
- 薬物のことが頭から離れなくなる
- 薬物がないと不安になる
- 薬物の使用を止めたくても止められなくなる
薬物を使用した時にまず最初に陥るのが「精神的依存」です。
精神的依存は比較的かなり早い段階で訪れるプロセスだと言われていて、上記のような精神的な作用が強く現れます。
この段階では身体的な症状が出ていないのが特徴です。
中期症状:慢性中毒
- 幻聴
- 幻覚
- 妄想
- 異常行動
- 蟻走感(コカイン)
一定期間薬物を乱用すると現れるのが「幻覚」や「妄想」です。
3ヶ月間ほど定期的に薬物を摂取しない限りこのレベルには達さないと言われていて、一度このレベルまで達してしまうとその後の完治はかなり困難と言われています。
また、異常行動によって他人に危害を加えるのもこの頃で、「誰かに見張られている」「誰かが私を殺そうとしている」といった妄想・幻聴・幻覚から暴力や犯罪行為によって周囲に危害を加える場合があります。
後期症状:身体的症状
- 歯が抜ける
- 不眠
- 悪寒
- めまい
- 動悸
- 疲労感
- 憂鬱感
中期症状とほぼ同時期に訪れるのが身体的症状です。
薬物によって身体がボロボロになり、頬も痩せこけ、目の焦点も合わず、薬物乱用者が「いかにも」といった風貌になってしまう頃です。
末期症状:最悪の場合は「死」
- 全身激痛
- 痙攣
- 呼吸困難
- 最悪の場合「死」
今までのプロセスの終着点がここです。
全身の骨をへし折られたかのような激痛に痙攣、呼吸困難を伴い、また過剰摂取によって動静脈瘤が破裂して死に至るケースなどもあります。
ここまで来たら治療・改善はほぼ不可能と言えるでしょう。
薬物を止められない理由は「離脱症状」
薬物の使用を止めようとすると、嘔吐・下痢・幻覚・全身の痛みなどの症状が出ます。
これを「離脱症状(禁断症状)」と言います。
薬物というのは本当に恐ろしいもので、一度ハマってしまうとやめたいと思っても自分の意志では止められなくなります。
自分の意志だけでやめられるほど甘いものであれば「依存症」という病名は付きません。
薬物を止めたい → 実際に薬物を断つ → 離脱症状 → この苦しみから解放されたい → 解放されるために再び使用してしまう → 離脱症状がピタリと治まる → 以下、延々と負のループを繰り返す
薬物を断とうとしても離脱症状の苦しみに耐えることが出来ず、このようなプロセスを経て大半の人が再び使用を開始してしまうのです。一生、苦しみます。
薬物依存症の治療・改善には「CBD」が効果的である可能性!
薬物依存治療に関する前臨床試験で「有望」との結果
大麻草由来成分の「CBD」ですが、驚くことになんと薬物依存症を改善する効果が期待出来るそうなんです。(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30837904)
Frontiers in Psychiatry 誌に掲載された記事によると、CBDは麻薬を含む薬物依存症の治療に価値がある可能性があるとのこと。
University College London によって研究によると、ヘロイン依存症患者を対象とした前臨床試験および試験研究では、依存症の症状である「ヘロインへの渇望」と「不安症状」の抑制に関して、「CBDの効果は有望的」との結果を得られているそうです。
ここで言う「渇望」とは、患者にとってヘロインに関連づいてしまうモノやコト、ヒトや場所などを指します。
例えば喫煙者が「居酒屋でお酒を飲んでいると普段より一層たばこを吸いたくなる」といった現象がこれに当てはまります。
なぜCBDは薬物依存症の治療・改善に効くのか?
薬物依存症に効果的であると考えられるCBDの効果
- 抗不安作用
- 神経保護作用
- 抗酸化作用
- 抗炎症作用
渇望の抑制に関してはCBDとの因果関係はまだはっきりと解明されていないそうですが、不安症状に関してはCBDの一般的な抗不安作用によって抑制可能であるとの結果が出ているそうです。
また、薬物によって引き起こされた神経変性や脳が、CBDの神経保護作用や抗酸化・抗炎症作用によって修復されるのではないかと考えられています。
ただし、大規模な臨床試験には至っておらず、依存症の治療・改善に対するCBDの有効性に関する研究は現在も進められている最中となっています。
まとめ
薬物依存症に陥るメカニズムやその恐ろしい症状を理解して頂けましたか?
薬物は一度使用したら最後です。身を滅ぼします。
どうにか治療して治ったと思っても、些細なきっかけ(渇望)で再び使用するようになってしまいます。薬物乱用者の再発件数が多いのはこのためです。
薬物依存症は自力で治せるものではないので、「どうにかここで引き返したい」と思える理性が残っている場合には、周りの人に頼って強制的に病院へ入院させてもらいましょう。
家族や友人に薬物乱用者がいる場合は、各都道府県にある保健福祉センターやNPO法人に相談するのが良いでしょう。
周囲に危害を加える前に、出来る限りの対策をしましょう。